スペックで見る Mac Pro
Mac Pro はプロ向けではあるものの、この価格を払ってでもスピードを上げたい人向けで、
コスパが良いかと言われると困る。
昔のグラフィックワークステーションで的なものなので個人で買うものではないと思われる。
CPU
Mac Pro は Cascade Lake ベース Xeon W 3200 シリーズ。
iMac Pro の Xeon W の大きな違いは DL Boost という機械学習向けの拡張機能が使用でき、
iMac や MacBook Pro 16 inch Core i9 との大きな違いは DL Boost に加え、AVX-512 が使用できる点である。
Mac Pro | iMac Pro | iMac i9 (2019) | |
---|---|---|---|
AVX-512 | ● | ● | |
DL Boost | ● |
AVX-512 は 512 bit 幅の SIMD (Single Instruction, Multiple Data) ユニット。
デスクトップ版 Core i9 で使用できるが、本来サーバー向けとして開発された Skylake-X にしか実装されてない。
元々、Intel Xeon Phi Processor という並列コンピューティング用の演算ボードのコプロセッサに導入されたもので、いままでの AVX とは異なり大きな変更があり、どちらかと言えば GPU のような感じ。
Xeon Phi の2世代目しか出ていない点を考えると推して知るべしというところ。
ちなみに、多分、今も AMD が 256、スマートフォンで使用している ARM は 128 だったはず。
Mac では Skylake-X が採用されていないため、AVX-512 を使用できるのは、現状 iMac Pro と Mac Pro だけだと思われる。
DL Boost は 推論の畳み込み積和算 を1命令で実行する VNNI (Vector Neural Network Instruction) と Google の TPU で使用されている bfloat16 という 32 Bit の浮動小数点の下位 16 Bit を切ることで精度は低くなるが、32 Bit で倍の詰め込めるものの総称でマーケティング的に DL Boost という名称を使っているらしい。
正直、これらの機能が現状で生かされるのかというと多分微妙であると思われる。
GPU
ベースモデルは 580X で微妙。
6K の Pro Display XDR では、解像度的にかなり描画処理に喰われそうではあるし。
Macお宝鑑定団 blog(羅針盤)で Compute ベンチがあり、現状 Vega II は Vega 64 よりベンチが遅く、この数値なら Vega II Duo * 2 は 64X の倍ぐらいしか出ない気はする。
それを考えるとそのうち出る 5700X は 64X の 10% up ぐらいなだろうと思われる。
Apple Afterburner
開発側がハードウェア記述言語を使って構成を設定できる集積回路である FGPA を使用したボード。
動画のデコードのために設計されており、Apple ProRes RAW でほぼ無圧縮な動画を 8K なら最大 6 ストリーム、4K なら 23 ストリーム同時再生できる。
とりあえず、他の用途でも使用できるよう期待している。
FPGA の詳細不明で、Intel や Xilinx や Lattice だろうかというところ。
Apple の FPGA 関連の求人も多いので、もしかすると自前でつくっているのかもしれない。
動画処理に CPU の使用率がかなり減るため動画編集するなら、正直 CPU/GPU のスペック上げるより、こちらに投資した方が良さそう。
(一部 ProRes の処理は GPU を使用するため、GPU も強ければなお良し)
ちなみに Afterburner は最大で3枚までさせるらしい。
その他
Geekbench における CPU や Compute のベンチはメモリにも左右されるので、今後高速なメモリが出れば結果は変わるかも。
また、ストレージの速度が上がると体感的に作業時間が変わるのでそこら辺も考えたいところ。
で、どうなの?
Mac Pro のベースモデルですらかなり高い価格が設定されており、現状ベンチ的にはベースモデルよりも iMac の上位グレードや iMac Pro 8 Core の方が良い結果が出てしまっている。
メモリもストレージもあまりないので、
何年間か売り続けた場合、旧 Mac Pro 以上コストに対してスペックが厳しくなる予感はある。
早い段階でマイナーアップされる可能性もあるが過去の流れから考えるとどうかわからない。
とはいえ、動画編集は早くしたいなら Mac Pro と Afterburner という感はある。
ただ、CPU は 12 Core 以上かつ、GPU は 580X 以上かつ Vega II 2つ以上と Afterburner となる相当厳しい価格帯。
Pro Display XDR を使用しないなら、コスパ的には iMac Pro、GPU のスペックが劣ってもよければ、iMac の i9 といったところ。
もし、Pro Display XDR を使用したいなら、eGPU で繋げば良いかと。